
AI時代における「人間らしさ」を考えてみよう
国士舘大学の出前授業の最後、学生たちに私はこんな問いを投げかけました。
「子どもたちにこう聞かれたら、あなたはどう答えますか?
『AIや自動翻訳があるのに、なんで英語を勉強するの?』」
この問いに正解はありません。
でも、これから子どもたちに寄り添い、学びを導く立場になる学生たちには、考え続けてほしいテーマだと思っています。
そこで私は、考えるヒントとして「3枚の画像」を紹介しました。
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① AIが描いた私の似顔絵

まず見せたのは、AIが自動生成した私の似顔絵。
たしかに技術的にはとても巧みで、あっという間に完成します。
背景の光や、ギターやぬいぐるみまでしっかり描かれていて、驚きもある一枚です。
でも――
そのあとに私はこう続けました。
「でも私は、こっちの絵のほうが、ずっと好きなんです。」
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② 孫が描いてくれた「じいちゃんの絵」

次に紹介したのは、私の孫が幼い頃に描いてくれた、手描きの“じいちゃんの顔”。
やさしいピンクの輪郭に、まん丸の目、ちょこんとついた鼻と口。
決して上手とは言えないかもしれない。でも、そこには“描きたい”という気持ちと、
“伝えたい”という心があふれているんです。
この絵には、AIには決して生み出せない「温かさ」と「記憶」があると私は思います。
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③ 浴衣の写真

そして最後に紹介したのが、国士舘大学の五十嵐先生が、お孫さんのために仕立てた、浴衣の写真。
夏祭り用に頑張って仕上げた力作。
細やかな柄選びと、手間をかけて贈るその姿勢にも、
「人にしかできない想い」が詰まっています。
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子どもたちの心に残るのは、AIではなく「あなたのことば」
私は学生たちに伝えました。
「これから出会う子どもたちが、本当に心に残していくものは何でしょう?
きっとそれは、翻訳の正確さや情報の速さではなく、あなたが話したこと、笑ったこと、つまずきながらも伝えようとしたこと。つまり、“あなた自身”なんです。」
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AIと共存する時代だからこそ、私たちは「人間らしさとは何か」を問い直す必要があります。
そして、教育とはまさにその問いと向き合い続ける営みだと、私は思います。
この授業が、学生の皆さんの心に、何か小さな問いを残せたとしたら幸いです。
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